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東京高等裁判所 昭和63年(ラ)670号 決定 1988年11月11日

抗告人 矢崎粂蔵

抗告人 矢崎勇

右両名代理人弁護士 岡島勇

相手方 埋草神社

右代表者代表役員 藤巻義次

主文

原決定を取り消す。

抗告人らの本件仮処分申請を却下する。

申請費用及び抗告費用は抗告人らの負担とする

理由

一  本件抗告の趣旨は、「1 原決定を取り消す。2 相手方の申立てによる原決定添付物件目録記録の不動産についての抗告人らに対する不動産明渡執行(甲府地方裁判所昭和六一年(執ロ)第一、二号事件の執行)を取り消す。」との裁判を求める(当審において、申請の趣旨を右2項のとおり変更した。)というにあり、その理由は、別紙「抗告の理由」記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  先ず、職権により、抗告人らの本件仮処分申請の適否について判断する。

確定した引渡命令は債務名義としての性質を有するものであるところ(民事執行法八三条四項、二二条三号参照)、債務名義に基づく強制執行を停止しあるいは取り消すことができる場合については民事執行法にそれぞれの規定があって、右は制限的に列挙したものと解すべきであるから、右の方法によることなく民事訴訟法第六編の仮処分の手続により強制執行を停止しあるいは取り消すことは許されないものといわなければならない(最高裁判所昭和二六年四月三日第三小法廷判決・民集五巻五号二〇七頁参照)。

したがって、引渡命令に基づく不動産明渡執行の停止あるいは取消し(原審では停止を求めていたが、当審では取消しを求めている。)を求める抗告人らの本件仮処分申請は不適法として却下を免れない。

2  抗告人らの抗告の理由は、抗告人らの本件仮処分申請が適法であることを前提とするものであるところ、右のとおり抗告人らの本件仮処分申請は不適当であるから、その前提を欠き失当である。

3  よって、抗告人らの本件仮処分申請が適法であることを前提として被保全権利の主張自体が失当であるとし、本件仮処分申請を理由なしとして却下した原決定は相当ではないからこれを取り消し、本件仮処分申請を不適法として却下し、申請費用及び抗告費用は抗告人らに負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 中村修三 裁判官 篠田省二 関野杜滋子)

<以下省略>

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